上の写真の生地、じつは途中に矧ぎが入っています。つまり、2枚の生地をつなぎ合わせてあるのです。つなぎ目、分かりますか?
ひっくり返すとこんな感じ。
柄をうまく合わせありますね。
この着物は、お客様のお気に入りの着物。
着倒した証拠に、擦切れた部分も多数。汚れもありました。
何度か洗い張りをし、傷んだところを見えないように仕立て直してきたのですが、
もうこれ以上は難しいというところまで傷んでしまっています。
着物としての役目を終え、今回改めてコートに仕立て直すことになりました。
仕立てに必要な長さが着物より少ないので、通常であれば余裕を持って作れるのですが、
この状態なのでなかなか困難な状況。
できるだけきれいな所を使うために、矧(は)ぎ合わせが必要となったのです。
矧ぎをした生地を、仕立てていきます。
写真は、最後に紐を縫付けているところです。
できました。
これが全体。
この中に、矧ぎの部分があります。
わかりますか?
ここです。
表側は汚れや傷みの少ないところを使い、
できるだけ矧ぎの部分が分からないようにしています。
裏からみると分かりますね。
仕上げのチェックをしながら、アイロンで整えます。
和裁士の技術は、縫うことが主ではありますが、こういったことも仕上がりに大きく
影響するので、大事な技術の一つと考えています。
今回のご依頼は、以前にお直しを承った際に、きれいな仕上げだったことから
再びご注文をくださいました。
お気に入りの大事な着物、信用できるお店でお手入れして大切に着てくださいね。
物を大切にすること。
日本から消えそうになっていた習慣が見直される時が来ています。